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摺型友禅 多ち花

Surigata Yu-zen TACHIBANA

友禅

 

型を重ねて染め上げる「摺型友禅」

 

 

一口に友禅染めと言っても、手描きや型染めなど、その技法も多様に発展している。戦後、創業した「多ち花」は「"摺型(すりがた)”友禅」を守る染繍舗だ。摺型友禅とは、色ごとにわけられた型を生地に乗せ、1枚ずつ絵を重ねるように染めを施す技法である。型は少ないものでは2、3枚、多ければ数十枚にもおよぶ。型の重なりによって模様を浮かび上がらせるだけでなく、色の濃淡をも描き出すのが多ち花の特徴だ。

 

 

「型友禅は明治時代にできた技法で、手描きに比べると安価で量産できるイメージがあります。たとえば同じものを二十反、三十反とつくるのであれば重宝しますが、二、三反と少量だと型をつくるのにコストがかかりますから、今、新たにひと柄つくろうと思えば意外と手間がかかります。うちは創業者の祖父が、本当にたくさんの型をつくってきたんです」

 

 

そう話すのは、現代3代目を継ぐ河合洋平。創業者が残した膨大な量の型をもとに、今ではかえって手間ひまのかかるものづくりに挑み続けている。そうして生まれる「多ち花」の商品とは、どのようなものなのだろうか。

 

型と色で無限の可能性を探る

 

 

多ち花には数百もの型が残る。桃山〜江戸時代の小袖や能装束、あるいはアジアやヨーロッパに伝わる更紗文様など、さまざまな文様からインスピレーションを受けてつくられた。そのどれもが「クオリティが高い」の一言に尽きるのだという。

「型を重ねて色の濃淡を出すにしても、型の彫られ方によって変わってくるんですね。今同じような雰囲気の文様を一から彫ろうと思うと相当コストもかかりますし、正直なところ、かなわない。創業者がつくらはった50、60年前のものも新しいものとして売ることができるだけのクオリティがあります」

 

 

同じ柄でも色を変えたり、あるいは色数を減らしたりするだけでもまったく印象が異なる。時代の流行を意識しながらも、その組み合わせは無限大だ。代々残してきた型と色があるからこそ、新しくも多ち花らしいものづくりができると言える。

「周囲の話を聞いては右往左往した時期もありましたが、結局買っていただけるのはうちらしさが色濃く出ているようなものなんです」

 

「多ち花らしさ」を守り、ひろげる

 

河合が多ち花に入社したのは26歳の時のことだ。その一年後には先代である父が急逝。家業について祖父や父から聞くことなく跡を継ぐことになった。

「二代にわたってお付き合いのある職人さんや得意先など、周囲から話を聞いて、僕なりに解釈しながら多ち花のものづくりはどういうものなのかを、外から学ばせてもらいました」

その中で、顧客や業者の口にする「多ち花らしい」という言葉が印象的だったという。頑なに守る掟があるからではなく、型や、色から自然に表れてくるものであるのだと、河合は振り返る。

 

 

「同じ柄をつくっても、祖父と、父と、僕とでやっぱり違うんです。いろんな失敗はあるんですけど、それも含めて自分なりの感覚でのものづくりと言いますか」

過去には5色ほどの色でつくっていたものを、1色を5段階に分けて柄を描き出すなど、新しい可能性をひらくことも試みている。

近年では、和装にこだわらず、蝶ネクタイやスツールなど、型友禅のテキスタイルを別のプロダクトにすることも始めた。三代目の多ち花だからこそできるものづくりは、さらなる展開を見せるだろう。

 

 

■多ち花(たちばな)の作品はこちら

摺型友禅 多ち花

Surigata Yu-zen TACHIBANA

◉多ち花(たちばな)

戦後、かつて京友禅の老舗「千總」で働いていた袖崎善蔵らによって創業。創業より一貫し、型紙を用いて友禅染めを施す染色技法「摺型友禅」に取り組む。桃山~江戸時代の小袖や能装束からアジア・ヨーロッパに伝わる更紗文様など、さまざまな文様からインスピレーションを得て図案化したもので、数百に及ぶ手持ちの柄(型紙)は全てオリジナル。

 

◉河合洋平(かわい・ようへい)

「株式会社多ち花」三代目代表。創業者がつくった型や、多ち花の色を活かし、時代性を反映した色使いやデザインによって新たな可能性を探る。NPO法人「きものアルチザン京都」参画メンバーでもある。

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