SACRA KYOTO JAPAN
和装小物
2001(平成13)年に創業した「和小物さくら」は、帯締めや帯揚げ、帯留めのほか、和装向けのアクセサリーや小物を手がける。京都らしい上品さが漂いながらも、現代の和装にマッチするモダンさ。職人の手仕事を感じられる端正さや、ほかにはない色使いにもセンスが光る。
2018(平成30)年には、「SACRA KYOTO JAPAN」を立ち上げ、和素材を使った新たな製品開発をスタート。双方をプロデュースするのが、代表の林克己だ。
「さくらが創業した当時はまだ、和装といえば“質より量”で流通している時代の最後の方でした。そんななか、色や柄に囚われない新しい世界観で自分たちのつくりたいものを質高くやっていきたいと思ったんです。熟練の職人さんたちが協力してくださって、一緒にやってこれました。ただ、やはり時代とともに職人さんたちも高齢化してきて、次の職人を育てていかないといけないのが現状です」
こうした現状から将来を見据え、始めたというSACRA。いったいどんなものづくりをしているのだろうか。
SACRAでは和装に限らず、バッグやランプシェード、ファブリックパネルなどさまざまな製品を生み出している。
「生地屋さんや機屋さんなどの職人さんに相談してつくります。紹介していただくこともありますし、職人さんを調べて、電話してお願いしに行くこともあります」
ともにする職人は日本国内に限らない。タイの伝統工芸品である「カゴ」をもとにしたバッグをつくる際には、1ミリにも満たない竹ひごを1本ずつ手編みでつくることができる確かな腕を持った職人を探し求めた。当時まだ日本では知名度が低く、情報がなかったため足掛け5年以上を費やしたという。時間をかけてでも、新たなものづくりに挑むこと。そのためにも重要なのが「昔ながらのきちっとしたものづくり」だと、林は語る。
「コストを下げるためだけに国外でつくったり、何かを省いて粗悪なものをつくったりすると売り上げ重視になってきて、目的が変わってきます。一見わからなくても、お客さんが満足できなかったり、すぐに飽きてしまったり。やっぱりずっと持っていてもらいたいんです」
近頃ではペットボトルを再生した生地をもとにした西陣織のダウンジャケットを製造。サスティナブルな視点はもちろん、斬新なアイデアにも注目が高まった。
「和装業界の僕が生地を考えて、織ってダウンジャケットという形にして見せてみる。そうすると『うちだとこういうものがつくれるかもしれへん』って思う人が出てくるかもしれません。僕たちはアイデアのきっかけづくりや素材の提供でいいんです。10人いたら10倍のアイデアが出てくるわけですから。新しいものづくりをして売れる出口が見つかったら、ものづくりを続けることができるし、職人さんやつくり手も増えてくると思います」
SACRAでの新たな取り組みを知り、「自分たちの生地を使って新しいことはできないか」、「大量に出てしまう廃棄物を別の製品に転用できないか」など、津々浦々相談がくるという。「知らないことも多く、ありがたいことです。勉強になりますしね」。林は、そんな声一つ一つに応えている。お互いに新たな視点を発見するきっかけにもなっているのだ。
SACRAが手がけるさまざまな製品や新しいものづくりの循環の先に、次の時代に求められる“和装”の姿、可能性が垣間見えたような気がする。
和小物さくら/SACRA
SACRA KYOTO JAPAN
◉和小物さくら/SACRA
―受け継がれた伝統を守りつつ、時代に合った新しいものを発信する ―
「和小物さくら/SACRA」は、長く愛されるこだわり抜いた品質はもちろん、京都の職人技や美意識を生かしながらも、独自のモダンなテイストを加えた意匠で、現代のきものの装いにもマッチするような、今までにない和小物を制作。見る人の心を動かすモノづくりを目指している。