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室町京正

Muromachi-Kyosho

京友禅

センスが光る、現代の着物

 

   

清廉で上品な色合いと、繊細な模様。「室町京正」の着物は、伝統的な美しさをそなえながら、現代にも馴染む洗練さが魅力的だ。
「うちはオリジナルの着物をつくって売る、製造卸の会社です」
生地のデザインから考え、20名もの職人を束ねる染匠に依頼をする。京友禅の染技法を生かし、今では珍しい糊糸目(*)など高い技術を用いながら、新たな着物を創作していく。そのために重要なプロデュースの視点を持つのが、二代目代表の那須修だ。

 

 


 

「自分たちでつくるので、すべてに責任があります。その代わり、商品のクオリティーを守れる。創業者が、そこを曲げない方法を考えて、製造卸というあり方にしたんです。クオリティーが高くセンスのいい着物をつくって、パッと見た時に『これは京正さんのだね』って感じてもらえるようにしたかったんです」

「着物は足し算してワードローブを楽しむもの」と、那須は言う。室町京正の着物は、帯や小物など組み合わせを楽しめるデザインであることや、布の大半を占める「地色」の部分を美しい色に染め上げるなど、細やかな技と美意識によってできあがっている。

 

(*)糊糸目(のりいとめ)…下絵の輪郭に合わせて防染用の「糊(のり)」を置く技法。友禅らしい柔らかな線を描き出す。現在の主流である揮発油で糊を落とす「ゴム糸目」と比較して、糊糸目は水で落ちるので微妙な色合いが保てる。もち米を原料とする糊そのものも、匠の手によってつくられる。

 

 

「日本一の番頭になる」

 
創業は1985(昭和60)年。何百年も続く老舗が立ち並ぶ京都において、比較的新しい企業である。今でこそブランディングと呼べる製造のやり方なども、新しい会社だからこそできたのかもしれない。世襲にこだわらず、一社員であった那須が代表に就いたことも、室町京正という企業らしさを表しているだろう。
「地元の岡山から大学進学で京都に出てきたのが平成元年。その後バブル経済が終わって、将来の出口が閉ざされたんです。行き場を失っていた時に、偶然親父(創業者)と出会って、この人の下で働こうと」
入社当初は「番頭」、つまり営業職を担った。「東北に行って、一つ10キロぐらいの箱をかついで売り歩くんです。行けども行けども売れず……ポキっと鼻をおられましたよ」と那須は笑う。それでも続けられたのは、創業者との縁が大きかった。
「日本一の番頭になりたかったんです。自分がそうなれたら、雇ってる社長は日本一の社長ですよね。続けられたのは、やっぱり人間関係です。製造に関わるようになってからは師匠と仰げるお客さんや職人さんと出会ったり」

 

着物につなげる、新たなものづくり

   


 

時代の変化を感じ取り、新たな試みにも挑んでいる。京友禅や西陣織など着物に関わるつくり手が集い、現代に即したものづくりを行うために発足した「きものアルチザン京都」への参画はその一つだ。また、昨今のパンデミックも大きな影響をもたらしたという。
「ゲームチェンジになったんだなと。着物づくりを続けるためにも、まずはいろんなことにチャレンジしてみる。僕たちを支えてくれている職人さんの技術を何かに生かせないか、と考えながら」

 


 

箔押しの技法を生かしたカフスボタンや、滋賀県伝統的工芸品「網織紬」の羽織りなど、和物に限らない製品を生み出している。近年では、環境負荷のない「ミルクプラスチック」を使ったアクセサリーなど、SDGsを視点に取り入れたものも。
「きっかけはどんなモノからでもいいじゃないですか。そこから、着物を見てもらえたら。着物では絶対負けないので」
江戸中期、友禅染を創始したとされる宮崎友禅斎が行っていた製造方法と同様の工程でものづくりを続ける室町京正の、新たな挑戦もまた、見るものに「京正さんらしいね」と思わせるに違いない。

 

 

◉室町京正の作品はこちら
 

室町京正

Muromachi-Kyosho

◉室町京正(むろまちきょうしょう)
1985(昭和60)年創業。日本最高級の友禅染の着物メーカーとして知られる。江戸時代中期に生まれた友禅染技法をそのまま生かし、現代に通じる美学や品格、芸術性を追求し続け、各方面から高い評価を得ている。

 

◉那須修(なす・おさむ)
1970(昭和45)年、岡山県生まれ。大学進学とともに上洛し、卒業後「室町 京正」に入社。2016(平成28)年より同社代表取締役。NPO法人「きものアルチザン京都」の副理事も務め、未来に向けて着物を世界に発信する取り組みや、技術者育成にも力を入れる。

 

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