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池内友禅京友禅

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300年続く手描き友禅技法

 

 

友禅染めは江戸時代初期の元禄期(1688-1704)、京都・知恩院の門前町に住む扇絵師・宮崎友禅斎によって考案された。布の上に描かれた模様の輪郭に沿って糸のように細く糊を引くことで、異なる色が隣り合っても混ざったり滲んだりせずに色が染まり、何色もの色を使った多彩な表現が可能となる。着物や帯の染色に用いられる、日本の伝統技法だ。

池内友禅は豊かな自然が広がる京都嵐山に1980年創業した手描き友禅の工房だ。創業者・池内路一は高校卒業後に日本画を志し愛媛から京都に上洛、京友禅の作家のもとで10年修行したのちに独立した。

一般的に着物や帯は分業制で、各工程ごとに職人が異なることが多いが、池内友禅ではほとんどを自らで手がける。路一と息子で2代目の真広の二人で、図案作成、着物の地色を染める「引き染め」文様を染める「彩色」など、全工程の7-8割にあたる約20の工程を行う。

 

 

余分なものを削ぎ、感動を伝える

 

 

池内友禅の作品は、植物が生き生きと描かれているのが特長のひとつだ。路一は奥の部屋から、「ごく一部ですが」と言いながら、着物のデザインのもととなる大量のスケッチを持ってきた。

「若い時はスケッチばかりやっていました。このあたり(嵐山)は歩くといろんな植物があって、自然の色や自然の形からヒントをもらいます」

スケッチを布にトレースしたのち、糸目筒に入れた糊を丁寧に模様の輪郭に沿って布に置き、数十種類の筆やハケを使い分け、染料を布に彩色していく。

そうした繊細な手作業を経て、桜や牡丹など馴染みのあるモチーフから、高山植物、近所で見かけたという野ぶどうまで、さまざまな四季の植物が立体感あふれる作風で生き生きと反物に描かれていく。

「染色でも俳句でも理屈は一緒です。五七五という決まった中で言葉を的確に入れないといけないように、我々はどのように柄を置き、どのように余分なものを省略するかというのを考えます。余分なものがあると、感動は伝わらないものです」と路一は語る。

 

 

客が自分好みを直接リクエスト

 

 

直接取引を行っているのも、着物や帯の工房ではめずらしい取り組みだ。2002年、業界全体の売上の減少を危惧した路一は、個人客向けの直接販売を開始。個人客が自分のリクエストを直接オーダーし、工房と対話を重ねながら、自分好みの着物や帯を「お誂え」ができる。

真広が日々発信する公式インスタグラムは2万人近いフォロワーを誇り、お誂えした置物や帯を着用した注文者の写真とともに、注文者が着物に託した思いや工程が綴られている。

「お客様が喜んでくれていることが一番嬉しい。自分達がつくったもので、お客様の人生が楽しくなったり、明るくなったという声を聞くのが何よりの励みです」と真広は語る。

真広はイタリア風の更紗文様を手描き友禅の技法で表現した染め帯を発表したり、友禅に使われる技法や素材を生かした革のブランド「SOMEA」を数年前に展開するなど、新たな試みにも挑む。

「手描き友禅は手で表現していくもの。世界のなかでも、布の上に手でこんなに繊細なことをする表現は稀少で、そのぬくもりが友禅の魅力だと思います。日本が昔から大切にしていたものを作品に込め、日本の美しさを作品に表現できたら嬉しいです」

新しい風を吹き込みながらも、三百年以上続く技法とともに日本の美とぬくもりは脈々とつながっていき、美しい装いと晴れやかな心を届けていく。

 

◉池内友禅の作品はこちら

池内友禅

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◉池内友禅 京都嵐山のほど近くにある手描友禅染の工房。1980年の創業以来、「彩り・潤い・調和」をテーマに江戸時代から伝承されてきた手描友禅染の技術を用いて、着物や帯の制作を行っている。 ◉池内 路一(いけうち・みちかず) 1947年愛媛県生まれ。幼少期より自然の美しさを愛し、写生やデッサンに没頭して過ごす。松山南高校デザイン学科を卒業後、愛媛松山から上洛。京友禅作家、木原生長の元で10年間の弟子修行の後、1980年に独立し、池内友禅を創業。 ◉池内 真広(いけうち・まさひろ) 1981年京都府生まれ。大学在学中、友禅作家であった父親の作品に感銘を受け、家業である手描友禅染めの道に入ることを決める。在学中より型絵染作家 澁谷和子からデザインを学ぶ。2004年同志社大学商学部卒業。同年より父親に師事し、手描友禅染めの技法を学ぶ。 Open:10:00AM〜18:00PM(ギャラリースペースは土日のみオープン)

京都府京都市右京区嵯峨五島町

T : 0758829768  /  F : 0758829768

E : masahiro_ikeuchi@ikeuchi-yuzen.com

URL : https://www.ikeuchi-yuzen.com/

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