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蘇嶐窯

Soryu-gama

涌波まどか

京焼・清水焼と小石原焼のマリアージュ

 

 

蘇嶐窯(そりゅうがま)は、京都で代々続く清水焼の家に生まれた夫・4代目涌波蘇嶐(わくなみそりゅう)と、福岡で14代続く小石原焼の窯元の娘として生まれた妻・涌波まどかが、それぞれの技術を融合し、夫婦で作陶活動をしている京都・清水の窯元だ。

二人はそれぞれ大学卒業後に通った京都の専門学校で出会い、のちに結婚。まどかは結婚当初はパートを掛け持ちしながら蘇嶐の活動をサポートしていたが、第二子である長男が小学校低学年の頃に「家業を継ぎたい」と意志表明をしたことが蘇嶐窯誕生のきっかけとなった。

「嬉しかった反面、『継ぐけど陶芸で食べていくのは厳しいし、何のバイトしようかな』って言われたのがすごくショックでした。それから、どうやったら陶芸だけで食べていけるかを夫婦で話し合うようになったという。私たちだからこそ生み出せる世界観があるんじゃないかと思い、夫の京都の技術と福岡の私の実家の技術を融合した物作りをテーマに、7年前に蘇嶐窯を立ち上げました」とまどかは言う。蘇嶐曰く「同じ陶芸でも、清水焼は茶道具や飾るものが多く、小石原焼は民藝の流れを汲み、茶碗や湯呑みなど生活に寄り添ったものが主流。使うのも磁土と粘土で、端と端くらいまったく違う」ところから、二人で試行錯誤を重ねた。

 

 

二つの技法を生かした青磁飛鉋

 

 

初代涌波蘇嶐は、明治・大正期の京焼青磁の第一人者である初代・諏訪蘇山の下で修業し、以来涌波家では代々青磁の技法を受け継いでいる。生地に顔料を練り込む「練り込み青磁」により生まれる、透明感がありながら深みのある青が特長だ。一方、まどかの実家である小石原焼では、器の生地に粘土質の白化粧土を施し、ろくろを回転させながら古時計のゼンマイを加工した鉋(かんな)の刃先を生地に当て、鉋が土を高速で削ることで規則的な文様が浮かび上がる「飛鉋(とびかんな)」という技法が有名だ。

蘇嶐窯では、涌波家に受け継がれた青磁に、小石原焼の技法である飛鉋(とびかんな)の技法を施した「青磁飛鉋」を制作している。

「最初はタブーじゃないかっていう恐れもあったんですけど、茶道具には飛鉋を取り込まないという決まりを作った上で、民藝の技法を青磁に掛け合わせることで、普段あまり馴染みがないと思われがちな青磁を普段使いとして展開しやすくなりました」とまどかは語る。

国内でも評判は上場で、数年前にフランスの展示会で展示販売したところ、器に込められた背景やストーリーが話題を呼び、以後8カ国で実演販売をしている。各国でシェフに直接商談し、ローマの二つ星レストランや東京の一つ星レストランでも蘇嶐窯の器が使われている。現在では白磁や、二色の釉薬を施した掛分(かけわけ)にも飛鉋を施し、蘇嶐窯の人気のシリーズだ。刷毛を当て文様を生地に施す小石原焼の技法「刷毛目(はけめ)」を青磁や白磁に施した器のシリーズも2022年秋に発表予定だ。

 

 

理想の青を目指し次世代に継ぐ

 

 

蘇嶐窯では器以外にもさまざまな陶芸作品を展開している。

高校生の長男が中学生の頃、夏休みに縄文時代の火焔型土器を作りたいと言ったことから生まれた「縄文シリーズ」も人気だ。サポートをするためにまどかが縄文土器について調べたところ、その造形の美しさと奥深さに魅入られ研究を重ね、長男と手びねりで作った土偶がSNSで話題となった。その後東京で個展を開いて欲しいと依頼があり、酒器、ヘアゴム、帯留めなども個展にあわせて制作し、以来全国の縄文ファンの心を掴んでいる。ろくろを回しながら器に飛鉋をする過程で生まれた、土のかけらをあしらったアクセサリーも好評だ。

新しい取り組みに挑みながらも、原点に立ち返ることも忘れない。

「理想の色があって、雨過天晴という雨が上がったときの空の色を出したいんです。祖父である初代も目指した作品の色でもあります。土の調合、釉薬の調合、窯を焚くときの火加減という三つが上手く揃ったときに出てくるんですが、まだ出てこない。もしかして一生出合えないかもしれませんが、目指すことに意味があるように思います。祖父や父から伝わる調合のレシピもあり、僕のレシピを加えて息子にも受け継いでいきたい」と蘇嶐は語る。

主婦の視点から、蘇嶐窯の器を電子レンジや食洗機に対応できるように生成し、器を重ねやすいよう一般的なサイズ展開を心がけているまどかは「ものの先に人がいるという気持ちを持っていてもらえたら。そして、楽しむ心をずっと忘れないで欲しい」と次世代を担う息子への思いを語る。

蘇嶐窯を始めた当初、夫婦で個性がぶつかり合いながらもたくさん会話をして、積極的にコミュニケーションを取ることで融和点を探したという。それぞれの違いを知り、差異を認め合い、対話を重ねてお互いを尊重していくことが、伝統から新たな潮流を生み出し、唯一無二のストーリーを世に生み出していくのだろう。

 

◉蘇嶐窯の作品はこちら

 

蘇嶐窯

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◉蘇嶐窯(そりゅうがま)

初代涌波蘇嶐が、明治・大正期に活躍した京焼青磁の第一人者である初代諏訪蘇山の下で修業。その技法を受け継ぎ独立、1940年頃京都・五条にて創業。以来、涌波家は4代にわたり京都・清水の地で伝統技術を守り作陶を続けている。2015年に蘇嶐窯を立ち上げ、京都・清水焼と福岡・小石原焼に伝わる技術をそれぞれ受け継ぐ職人が互いの技を融合し、夫婦で作陶活動をしている。

 

◉4代目 涌波蘇嶐(わくなみ そりゅう)

1977年京都市生まれ。成安造形大学 造形美術科 芸術計画群卒業。京都府立陶工高等技術専門校陶磁器成形科・研究科修了。京都市伝統産業技術者研修陶磁器コース本科修了。2005年4代目涌波蘇嶐を襲名。

 

◉涌波まどか(わくなみ まどか)

1976年福岡県生まれ。福岡・小石原で14代続く窯元に生まれ、幼い頃から陶器に親しんで育つ。佐賀大学教育学部造形文化コース卒業。京都府立陶工高等技術専門校陶磁器成形科・研究科修了。

 

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