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小嶋商店

Kojima-shouten

提灯

京提灯のあかりを守る老舗

 

 

江戸・寛政創業、小嶋商店は200年以上の歴史を持つ京提灯の老舗だ。提灯には骨組みとなる竹ひごをらせん状に巻く「巻骨式」と、竹ひごで1本ずつ作った輪を木型にはめ等間隔に平行に組んでいく「地貼り式」の2種類がある。地貼り式の京提灯は巻骨式より工程を要すこともあり、現在では京提灯を作る工房は数えるのみとなった。

初代の小菱屋忠兵衛(こびしやちゅうべえ)は、曲げわっぱなどを作っていた職人に弟子入りし、師匠の娘と結婚を機に独立。江戸時代中期当時に一般家庭に普及し始めた提灯に着目し、自身の技術を生かし提灯の天地にある木製の黒い部品を作ったことから、小嶋商店の提灯づくりは始まった。

現在では全国の寺社の提灯、京都・南座の高さ2メートルの大提灯などの提灯から、カリモク家具とデンマークのデザイン会社とコラボレーションした現代的な室内照明まで、さまざまな作品を生み出している。

 

 

インテリアとして提灯を展開

 

 

小嶋商店では、制作のすべてを手作業で行う。骨組みとなる竹を細く割る「竹割り」、定規板に合わせて竹を必要な長さに切る「骨切り」、和紙を貼っていく「紙張り」など、約十の工程を経て京提灯が出来上がっていく。

京都市内にある工房では10代目の小嶋諒、父であり9代目の小嶋護ら数名で提灯を作る。約二十畳の板間の作業場は木型に囲まれ、竹ひごや道具類が所狭しと並ぶ。以前は製造のみで問屋や小売店に商品を納入していたが、時流もあり売上が減少し、諒の兄で護の長男の小嶋俊が経営を立て直すべく、直接販売など新たな道を開拓した。2014年に初代の名を冠したあかりのブランド「小菱屋忠兵衛」を兄弟で立ち上げ、提灯の新しい在り方を展開した。2015年にパスザバトン京都祇園店がオープンした際、提灯を室内照明として展示販売したことが脚光を浴び、以来インテリアとしての提灯の需要が国内外で増えた。その後は提灯によるインスタレーションやイベント出展、海外の美術館での製作実演など、国内外でさまざまな活動を行う。

「初代が自分の技術を生かして提灯作りにチャレンジしたように、提灯の新しい需要を探していけたらと思います。伝統工芸品の多くはかつては日常で使われていましたが、提灯も時代とともに日常使いから非日常のものとなった。室内照明として使うことで、提灯を非日常から日常のものとして感じてもらえたら嬉しいです」と諒は語る。

 

 

未来のためにも楽しく仕事を

 

 

兄弟の父・護は、当初は俊の新たな取り組みに難色を示し「3年ほどバトルが続いた」そうだが、3~4年前から息子たちに経営を一任し、提灯に字を書いたり紋を入れたりする「絵付け」を中心に裏方に徹している。

「あのまま私のやり方でやっていたら、今頃小嶋商店はなかったかもしれません。僕が背負っていたものを全部子どもたちが持っていってくれた。今のように自分たちが作ったものに対するお客さんの反応を生で感じるようになってから、仕事が楽しい。子どもたちのおかげです」と目を細めて護は話す。

2018年に小菱屋忠兵衛ブランドと一本化して株式会社小嶋商店を設立。俊は2021年に諒に代表取締役の職を引き継ぎ、家族で京丹後市網野に移住し、新たに工房「小嶋庵」を立ち上げた。小嶋商店の竹割りを担いながら、「お祭りのように地域に提灯がある風景を守るために、自分ができることを実現していきたい」と話す。

兄弟と20年来の友人の武田真哉はドイツ・ベルリンの特殊機器メーカーで働いていたが、俊に口説かれ5年前から小嶋商店に参画。提灯を作りつつその場でデスクワークもこなし、海外事業や経営管理業務を担う。「前職より今のほうが圧倒的に楽しい」そうだ。

たまに冗談を言い合いながらも作業の手は俊敏に動き、工房は活気にあふれていた。かつて兄弟が遊び場として走り回った工房には、小嶋商店の子どもたちはもちろん、地域の子どもが学校帰りにふらっと立ち寄ることもある。

諒は「楽しそうに僕らが仕事してるのを子どもに見せたい。そしたらいつか自分の子どもたちも、提灯を作りたいと思ってくれるんちゃうかなと思います」と語った。

伝統を継ぎ、時に新たな道を開拓し、次世代にものづくりの喜びを伝える。小嶋商店が灯すあかりは、これからも誰かの頭上や足元を照らし、やわらかな光とともに人々の心にあたたかい気持ちを灯していくのだろう。

 

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小嶋商店

Kojima-shouten

◉小嶋商店

創業江戸寛政年間。竹割から紙貼りまで一貫した手作業で頑丈で無骨な小嶋式提灯を生み出す。江戸時代から代々伝わる伝統製法をベースに、「素材やフォルム、空間」と「提灯」との関係性を模索し、提灯が生み出す新たな景色を創造する。

 

小嶋 護(こじま・まもる)

1960年京都市生まれ。1979年阪南大学を中退、父に師事し、提灯職人として修行を始める。

 

小嶋 諒(こじま・りょう)
1989年京都市生まれ。小嶋商店9代目・護(まもる)の次男として生まれる。

2008年高校を卒業後、父の元で提灯職人として修業を始める。2021年より株式会社小嶋商店代表取締役。二児の父。

 

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