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SHOWKO

SIONE

SHOWKO

物語をささやかに語りかける器

 

 

銀閣寺ほど近く、閑静な住宅地に「SIONE 銀閣寺本店」は佇む。元旅館だった町家を改装した建物には、畳の小上がりがあり、窓から庭の緑が美しい。手前のショールームには、白地に金や赤、青などで鮮やかに彩られた器が端正に並んでいる。

SIONEは「読む器」をコンセプトにしたブランドだ。星が生まれるストーリー『漆黒の宝石』、海の奥深くに生まれた最初の命を描いた『カソケキモノタチ』、そして海から陸へとあがった植物たちによる繁栄の物語『RINRAN』……。物語が“器”というかたちになり、使うわたしたちにささやきかけてくるようだ。

はじめに物語を書き、焼きものをつくる。そんなユニークなブランドを手掛けているのがSHOWKOだ。「もともとSF小説が好き。焼きものをつくるずっと前から、自分の考えたことを表現するのは文章だったんです」と話す。言葉での表現も得意とする彼女が選んだものが、焼きものだったのはなぜだろうか。そこには、彼女の出自も大きく関わっているという。

 

 

さまざまな“時間”の中で育む

 

 

SIONEの器には花や植物など、SHOWKOいわく「時間を表すモチーフ」が多く描かれている。 “時間”は彼女にとって、自身のルーツを示すものの一つだ。

SHOWKOの生まれは、江戸時代から330年も続く茶陶の窯元「真葛焼」。小さい頃から、将来名を継ぐのは兄と決まっていた。特殊な環境は、自分が何者なのか、「継ぐ」とは何なのか、さまざまな思いを巡らせるものでもあった。

大学時代は日本文学を専攻。就職活動に違和感を感じたことから「手に職をつけたい」という気持ちが湧き上がった。選んだのは家業と同じ、陶磁器の世界だった。

「欠けた器でも5万年近く土の中に埋まっていたりと、長い時間地球にあり続けるんですよね。そう思うと一瞬の嬉しさや豊かさも表現できるし、もしかしたら未来に文明を伝えられるかもしれない。焼きもの自体が“時間”を表現するものだと思ったんです」

学ぶ先を京都でなく、佐賀県に求めた。絵付け師のもとで鍛錬し、再び京都へ。伝統が息づく古都で、新たな時間の旅が始まった。

 

 

積み重ねの上にいる「1万代目」

 

 

SIONEを立ち上げてから十数年。時を経るとともに、自分自身のあり方にも変化が生まれてきたという。

「始めた頃は、何代も続いている京都の工芸の世界の中で『自分は1代目』っていう自負のようなものがありました。けれど、今まで出会った人たちや、学んだことが少しずつ積み重なっていて今の私がいるとしたら、それはきっと1万ぐらいになっているんですよね」

生まれ育った家の歴史も、SIONEのあゆみも、すべて小さな時間の積み重ねによってできている。長い歳月の内には、技や文化を失ってしまうような苦しい時もあるだろう。数ヶ月店を閉めざるを得なかった昨今のパンデミックでは、SHOWKOにとって孤独に思う日もあったそうだ。そんな時も、焼きものが持つ“時間”が彼女を救った。「つくった作品は自分より長生きする」。ブランド当初から伝えてきた言葉が、今では自分自身の心のよりどころでもある。

 

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◉SHOWKO(しょうこ)
代表取締役 / SIONEブランドデザイナー・陶板画作家。佐賀県で陶芸の修業をし、2005(平成17)年に京都にて工房を法人化。「SIONE(シオネ)」を立ち上げる。2016(平成28)年に銀閣寺近くに直営店をグランドオープン。
ミラノサローネに出品するなど国内外での展示も積極的に行う。

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